久々のはしご
先日、久々に本屋さんのはしごをしました。
京都、叡山電鉄・一乗寺駅にある恵文社一乗寺店(文科系女子御用達・気骨のある本屋さん)で暫く振りに書架に並ぶ選書の美しさを見て書店員さんの愛に打たれた後、ご飯を食べて、帰り際に北大路の大垣書店に寄る、という。
北大路には、本店とビブレ店があるのですが、個人的におすすめはビブレ店。なんというか、日々やってくる人々の興味をそそるように選ばれている本が「今」っぽくて、住宅地にもあるから「日常生活」っぽい感じがいいのです。
本店は、ビブレ店より年齢層が高いイメージがあります。
家に帰ってから、相方に報告したら「またぁ」と笑われました。
大型書店はいっぱいあるけれど、個人的には大垣書店が好きだなぁ。
この辺りは、また別に書ければいいな、と思います。
ピアノ・レッスン
自営業をしていると、基本は一人おうち仕事なので、空間にアクセントをつけるBGMは必須です。(おしゃべりして気分を変えられたらいいんですけどね。)
BGMの条件としては、耳馴染みが良いこと、主張しすぎないこと、適度に空間のメリハリをつけてくれること。
そう思うと、映画音楽や舞台音楽に結構アタリがある気がします。
今日のBGMは、「ピアノ・レッスン(ピアノ・レッスン オリジナル・サウンドトラック)」。
これと、先日紹介していたmusic & meをヘビーローテーション。
マイケル・ナイマン作曲の映画サウンドトラックCDです。
映画自体()は、1850年代にスコットランドからニュージーランドに嫁いだ言葉を発しない女性の物語で、ピアノのみが彼女の「感情の生命線」という設定。静かで情熱的、漂うエロティックな雰囲気、この時代のクラシックな舞台設定が何ともいえません。
全体を通して微熱をはらんだような緊張感。初めて見たのが大学生の時だったので、今見たらまた違う感想を持つのかな。
実は、音楽に心つかまれたのが先で、映画を見たのは随分後でした。
テーマ(「楽しみを希う心」)に流れる16分音符が、夜に舞う花びらのように聞こえて、それがとても好きなのです。
先に映画を見ていたら、曲のイメージはまた別だったのかもしれないな、と思います。
ピアノ・レッスン(映画)
※下の画像はamazonにリンクしています。
ブックサーフィン
ネットサーフィン、という言葉があります。ネットにある情報の海で、あたかもサーフィンをするよう、興味を惹かれる情報の波に次々と乗り移っていくことを指します。
同じように、ブックサーフィンをよくします。
1冊読んだ本を後書きまで読むと、関連する書籍がのっていたり、著者に近しい作家さんの情報があったりします。本を読み終えた時点では、なんとなく読み流しているのですが、本屋さんへ行った時、ふとその情報が甦ったりします。
そんな感じでついつい手にとり、気がつけば、1冊の本から広がる網の目のように、関連する本を読んでいます。
これって、ネットサーフィンならぬ、リアルでのブックサーフィンだな、と思います。
ポイントは、ブックサーフィンで気になった本は、自分にとって「当たり」が多いこと。共感する本や作家さんから広がる網の上なので、良い収穫があるのは当然なのかもしれません。
森見 登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」のなかで、下鴨糺の森で毎年行われる古本市を舞台にしたお話があります。そこで、古本市の神が出てくるのですが、まさにその神の台詞の通り。深く同意します。
…『父上が昔、僕に言ったよ。こうして1冊の本を引き上げると、古本市がまるで大きな城のように宙に浮かぶだろうと。本はみんなつながっている』(夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)から引用)
「夜は短し歩けよ乙女」は、京都百万遍を舞台に、「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」が心を射止めるために回りくどい悪戦苦闘を繰り広げる、かっこわるさと面白さと甘酸っぱさがないまぜになった素敵なお話です。くだらない状況にも不必要に教養がぶちこまれていて、いかにも京大生っぽい。青春時代のかっこわるさと楽しさを思い出して、暖かい気持ちになりますよ。
ノスタルジア 原田知世
最近、お気に入りの曲。
なんだか、ちょっと懐かしい感じで、どこか切ない。でも暖かい曲。
無印良品っぽい感じもするけど…。
この少し気だるい感じが、春の気配を感じ始めるこの季節にぴったりな気がします。
(「music & me」に収録されている曲です。うららかな春の日のBGMにかけっぱなしでも心地よいです。)
りかさん
朝の光の清らかさ、春の気配、や、梅雨時の鬱蒼とした雰囲気。
繊細な内面のゆらぎや色合いの変化。
梨木 香歩さんのお話は、そんな目に見えない事象を丁寧に映し出すのが上手いな、と思います。
春の気配がようやく見え隠れするこの時期、読みたくなるのが、
『りかさん (新潮文庫)』
リカちゃん人形が欲しい、とおねだりしたら、お祖母ちゃんからプレゼントされたのは市松人形の「りかさん」。
主人公のようこちゃんは、思っていたのとちがう贈り物に、ひとときは落胆するのですが…。
不思議な力を持った「りかさん」と過ごしながら、日常の中に隠れている不思議な出来事を経験していくお話です。
お祖母ちゃんからもらった「りかさん」には説明書がついています。それを見ながら「りかさん」のお世話をするシーンは、女の子だったら、ちょっと憧れるのではないでしょうか。お人形専用の小さな器に、毎日一口ずつ、家族と同じ食事をのせてお世話する。お話の中では、お母さんもワクワクしていました。
私も、雛人形の小さな器に、おひな祭りのチラシ寿司とはまぐりのお澄まし汁をのせて差し上げたことがあります。母と一緒にひな壇のお膳にのせるとき、何か愛おしいような気持ちになったのを覚えています。おままごとのような儀式めいた遊びは、気持ちをどきどきさせてくれます。
其処ここに何かの精がいたり、大切にしているぬいぐるみに心があるんじゃないかな、なんて、ほのかに思っている気持ち。
梨木さんはそんな目に見えないことを大事に掬い上げてくれる気がします。
おひな祭りの季節、この本を読みたくなってしまうのは、そんな気持ちが呼び起こされるからかもしれません。
(ちなみに、この本は「からくりからくさ」と連作になっていて、続けて読むとより奥深い物語の世界を味わえます。)
本屋のおたく
本屋のおたく、という言葉を言われたことがあります。
本はもちろん好きです。通勤の行きと帰り(計1時間くらい)+寝る前(1時間くらい)で文庫本1冊は軽く読了するくらいは好きです。
まだ会社勤めをしていた頃、終業後は必ず本屋によって帰っていて、
京都烏丸通り三条にある大垣書店→四条にある大垣書店→(地下鉄四条駅内にあるくまざわ書店)→京都駅の地下街にあるくまざわ書店→京都駅の地下1Fにある三省堂書店、というコースが定番。
毎日通ってたら、本の入れ替えまでわかるようになりました。
普通のことだと思って、ごくフツーに話していたら、
「本というより本屋のおたく」
と言われて衝撃的でした。
お洋服のウィンドウショッピングや、帰りに一杯、が癒しになる人もいます。ですが、私にとっての聖域・癒しの場は本屋さんでした。
悩みがあるときなど、なんど本屋さんに助けられたでしょう。書架を巡回していれば悩みに応えてくれる本と目が合います。本屋の神様っているかも、とよく思います。
これから記す、本と本屋のアレコレを、本屋の神様にささげたいと思います。